時の政権を利するリビジョニズム(歴史修正主義)

今月は終戦の月ということで、その関連の話題を続けてみたいと思います。
一昔前、リビジョニズム(歴史修正主義)という言葉が流行ったことがあります。


読んで字のごとく、(主に自国の)歴史を修正しようという動きですが、それらは「ナチスユダヤ人をガス室で大虐殺したというのはウソ」「南京大虐殺はなかった」などの誤った歴史認識に基づいております。


リビジョニズムはまずネオナチによりドイツの若者の間で流行し、その後を追うように日本でも流行りまして、ネットによる影響でハマった若者も少なくはないのではないでしょうか。


そのような誤った歴史認識が流行る社会的な背景としては、若者の雇用不安や将来への不安があるなどと言われております。


リビジョニズムは、そのような雇用不安や将来への不安から目を背け、仮想敵に目を向けさせることになるために、時の政権には非常に好都合なのです。
日本でも、それらの誤った歴史認識を煽っているサイトの論調が、ことごとく「政権与党の古株の方」の主張に似通っていることに気付かれることと思います。


実はリビジョニズムのような陰謀史観はもともと昔からあったものでして、最近になって出てきた目新しいものではありません。
それらの主張に含まれる要素は、大抵次のようなものです。


・虐殺人数が異なる
・写真が捏造されている
・写真が誤用されている
・虐殺がなかったという証言がある


リビジョニストは、ズサンな文献などから、これらの偏った内容だけを基にして、マインドコントロールの「解凍」「変革」「再凍結」の過程を利用して、誤った内容を信じ込ませていきます。


「実は教科書に書いてある南京大虐殺はなかった!」などという、それまでの既成概念を壊す過程が「解凍」です。
「変革」とは、「虐殺人数が異なる」「写真が捏造されている」「写真が誤用されている」「虐殺がなかったという証言がある」などを羅列し、新たな概念を植え込む過程です。
「再凍結」とは、それらの内容を繰り返して、定着させることです。


虐殺の人数については、ユダヤ人が600万人、南京大虐殺が30万人とされていますが、ユダヤ人の虐殺人数については学者や研究者により90万人や150万人など意見が分かれています。
南京大虐殺も、恐らく実数は30万人より少ないでしょう。


しかし、「虐殺人数が600万人や30万人でないから虐殺はなかった!」などという「オール・オア・ナッシング」の思考をする必要は全くありません。


被害民族や被害国による誇張を含む主張だけを見るのではなく、他の学者や研究者による検証が必要でしょう。
この場合、学者や研究者が当事国のリビジョニストであった場合は信用に足る数字は出てきませんから、中立な第三国による検証が望ましいと思います。


写真や証言の問題について、リビジョニストは既に事実と判明している事柄についての重箱の隅ばかりを集めて論拠にしたりもしますし、加害兵士や被害者の証言を完全に無視する傾向もあります。


「どこかの誰かが写真を捏造していた!」「この写真は別の事件の誤用だ!」からと言って、「虐殺はなかった!」とする必要ありません。


最近はリビジョニズムの動きも一昔前ほどではありませんが、特に未成年の方々などは、それらを鵜呑みにするのではなく自らモノを考える姿勢や、メディアリテラシーについて学んで欲しく思います。