A級戦犯合祀に嫌悪感を抱き、以後靖国参拝を中止した昭和天皇

毎年この時期になりますと、ひとつの問題が話題となります。
閣僚の靖国神社参拝です。


個人的には、外交関係に影響を与えることになる閣僚レベルの参拝は立場上すべきではないと思っておりますが、A級戦犯合祀に不快感を抱いて参拝を中止した「国民の象徴」とされる人物も存在しておりました。


昭和天皇です。
みなさんは、当然のように天皇靖国神社に参拝していると思い込んでおられるかも知れません。


しかし、従来から、昭和天皇A級戦犯合祀後にそれまで参拝していた靖国神社の参拝を取りやめていたことから、参拝を中止した理由はA級戦犯合祀にあるのではないか(ではないかというよりも、状況から察すればまずそうとしか考えられないのですが)とされてきました。


その件について、数年前には元宮内庁長官による「富田メモ」、元侍従長による「卜部日記」などが相次いで公開されまして、昭和天皇靖国参拝中止がA級戦犯合祀に起因しているものであることが裏付けられています。
「卜部日記」によれば、「靖国神社の御参拝をお取りやめになった経緯 直接的にはA級戦犯合祀が御意に召さず」ということです。


これだけでは詳しい理由までは不明ですが、故徳川義寛侍従長A級戦犯合祀後の昭和天皇参拝取りやめの具体的な理由にまで踏み込んで次のように明かしています。


http://www.asyura2.com/07/kenpo1/msg/622.html
>靖国神社によるA級戦犯合祀(ごうし)に対し、昭和天皇が「戦死者の霊を鎮めるという社(やしろ)の性格が変わる」「戦争に関係した国と将来、深い禍根を残すことになる」との懸念を持っていたことを、故徳川義寛侍従長歌人岡野弘彦氏(83)に伝えていたことが三日、分かった。


要点は次の二つです。


・戦死者の霊を鎮めるという社(やしろ)の性格が変わる
・戦争に関係した国と将来、深い禍根を残すことになる


A級戦犯合祀により「鎮魂の社の性格が変わる」とは、「A級戦犯が祀られることで、他の戦死者の霊が鎮まらなくなる」「鎮魂の目的ではなく、戦前のように軍国主義の象徴となる」ことなどを懸念していたことになります。
「戦争に関係した国と将来、深い禍根を残す」とは、外交関係についての予見的な懸念です。


昭和天皇については、上の話とは別ルートから、戦前・戦中はともかくとして、戦後は一貫して平和主義者だったと聞いたことがあります。
小泉首相(当時)の参拝などは、まさに昭和天皇の懸念を具現化したとも言えるものでありまして、靖国神社に参拝される閣内の方々は、A級戦犯合祀で激怒したとも言われる昭和天皇の胸中を推し量ってみては如何でしょうか。