北朝鮮の真の脅威「ムスダン」とは…大陸間弾道弾級のテポドンなど隣国向けではない

選挙前に戦争を始める国があります。
適当な理由をつけて他国に攻め込んだり、あたかもナチスのように他民族を虐殺するなどして、国威を発揚するためです。
時の政権に有利になるようにすることが目的なのですが、それ程ひどくないとは言え、どうもそれと似たようなことが起きているようでありまして、北朝鮮テポドンが同じ目的に「利用」されているフシがあります。


テポドンは北の公式説明で「衛星を打ち上げる」とされていますように、ロケットとしては大気圏外(宇宙)向け、仮にミサイルとしましても大陸間弾道弾並の性能があります。
その遠距離用のテポドンを近くの隣国に向けて打ち込む必要は全くありませんで、実際に日本全土が射程に入るノドンミサイルなどは200発ぐらいが既に配備され、我が国に向けられています。


現在、テポドンの緊張が煽られていますが、政府筋の「迎撃体制」との言葉はいささか言い過ぎ気味ではないかと思えます。
迎撃という言葉は迎え撃つという意味ですが、既に説明しましたように、日本向けのミサイルはテポドン以外に既に配備されています。
射程距離からすれば、テポドンが日本向けのものでないことは明らかです。
つまりテポドンに関しては我が国を標的とするものではありませんから、迎え撃つ必要が全くないのです。
しかも、ノドンの性能を遥かに超える「ムスダン」こそが真の脅威との指摘もあるほどです。

現在、マスコミが垂れ流しで報道している「テポドンを迎撃する」という意味は、①テポドンの推進装置などが故障した場合に、②北朝鮮の管制指令による自爆装置が働かず、③(発射5分後の高度250km-1000kmから落下してくるなどして)日本領空に本体や破片が到達し、④大気圏内でそれらが燃え尽きずに、⑤落下物の軌道の計算が可能で落下コースの予測が行え、⑥迎撃ミサイルの射程内(PAC3で20Km)に入ってくる、のような条件が全て揃った場合のみの話でありまして、可能性としてはごく僅かです。
しかも、これまでのミサイル迎撃実験は、事前にミサイルを撃つ場所や時間を迎撃側に伝えて、全てお膳立てを整えてから実験するケースが多く、それでも当たらない場合が多いのです。
今回の場合、テポドンを撃つ場所や時間がレーダーや衛星で把握できても、当初の予定通りの軌道で飛んでいけば人工衛星を打ち上げるコースですから、迎撃する必要はなくなります。
ここが、予定通りに飛んだものを撃墜してきたミサイル迎撃実験とは異なるところです。
仮に北のテポドンが故障して自爆が不発だった場合、そのような可能性は極めて僅かだと思いますが、軌道から外れて全くコントロールを失った状態で故障した不規則な推進装置で無軌道に飛ぶ事態になりまして、軌道の計算などできるわけがないのです。


また、人工衛星は一般的に東向きに打つものだそうで、それは地球の自転と関係があります。
何も日本へ向けて打つわけではありません。

それと、打ち上げ通告は「予告ホームラン」のような挑発ではありませんで、宇宙条約に基づく決まり事です。


そのような事情は国も十分に把握しているはずなのですが説明不足でして、東北ならともかく、軌道とは何の関係もない東京周辺に射程が20KmのPAC3を配備するなど大袈裟もいいところで、政権与党の作為的な意図を感じます。
テポドンに何も故障がなければそのまま衛星打ち上げルートで飛んでいきますし、推進装置の異常で東京方面に行くとなれば、それは北の制御を離れて秋田県上空250km-1000kmを通過するはずの軌道を大きく逸れ、曲がりながら不規則で無軌道な飛行をしているということでして、そのように不安定な推進装置の状態では軌道計算は不可能です。
そもそもロケットの打ち上げ失敗は1段目で発生する場合が多く、その場合はほとんど北朝鮮の領域内で自爆装置か空中分解による爆発が起きます。
それ故に、最初の故障により、落下点が東京になるような軌道を描くコースを辿るという設定にも、かなり無理があると言わざるを得ません。
もしそのように「どんなルートになるか分からないシロモノ」を打ち上げるのであれば、ほぼ垂直に設置されているテポドンが360度どの方向に、どれだけの距離を飛ぶのか分からないということですから、中露でさえ大騒ぎのはずです。
中露にそのような動きがないということは、技術的に他国に被害が出る確率が低いと両国が判断しているということでしょう。



政府の不可解な点は、テポドンばかりを騒ぎ立てて脅威に仕立て上げ、既に数百基が配備されており常に照準を日本に合わせているノドンやムスダンなどの真の脅威に触れたがらないところです。
すぐにでも打てる中短距離ミサイルについて知らしめず、野ざらしのまま組み立て状況が衛星画像で丸分かりの大陸間弾道弾ばかりを大騒ぎしていては国民の防衛意識が誤った方向にミスリードされると思うのですが・・・。